近年、医療機器業界の各企業においても、コンプライアンスを維持していくことが、重大な課題になっています。
それは、コンプライアンスの違反によって、企業がうける損害・被害が、以前に増して大きくなっているからです。
コンプライアンスの違反事例には、営業職の関与するケースがいくつもあります。
目標の達成や、売上拡大のため、ついついコンプライアンスよりも利益を優先して行動してしまうからです。
今回は、医療機器業界を取り巻くコンプライアンスについて、次のことを知ることができます。
医療機器の営業職が注意すべきコンプライアンスとは何か?
具体的にどんな法令があるの?
コンプライアンス違反が発覚した場合の損害は?
どんな事例があるの?
コンプライアンスは、医療機器業界で働くうえで、また自分を守るために決しておろそかにしてはいけません。
コンプライアンスの意識をもって、営業活動できるよう、しっかり学んでおきましょう。
医療機器業界のコンプライアンス
コンプライアンスとは、法令遵守という意味ですが、企業に適応されるコンプライアンスは、範囲が広く、社会規範、企業倫理、公平公正さが求められます。
医療機器業界においては、患者に使用される医療機器が、メーカーやディーラーの不当な行為によって選択されるようなことがあってはなりません。
医療機器は、患者の生命や健康を関わるものです。
そのことを前提に、販売企業と医療従事者は、適切な関係の維持しながら行動しなければなりません。
企業によっては、まだまだその意識の薄く、または、末端の社員まで周知徹底されていないところもあります。
医療機器の営業は、ほぼ単独で行動します。
あなた自身が不正行為に巻き込まれないためにも、コンプライアンスの知識はとても重要です。
医療機器業界の営業に取り巻く法令って何?
医療機器業界には、様々な法令が関係しています。
その中でも営業マンが現場で活躍する上で、重要と思える法令を4つご紹介いたします。
- 独占禁止法
- 不正競争防止法
- 医療機器業公正競争規約
- FCPA 海外腐敗行為防止法
なんだか難しそう
営業に関わる部分をかんたんに説明しているよ。
自分自身が巻き込まれないように、何となくでも覚えておきましょう。
独占禁止法(知的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)
独占禁止法は、公正かつ自由な競争を促進し事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにするための法律です。
その中でも特に医療機器の営業の身近にある不正行為は、「カルテル」、「入札談合」、「再販売価格維持行為」、「不当廉売」ではないでしょうか。
「カルテル」「入札談合」は、競合会社が連絡を取り合い価格などを取り決める行為です。
「再販価格維持行為」は、メーカーが販売価格を指定し、小売業者にその価格を守らせる行為です。「再販売価格の拘束」ともいいます。
「不当廉売」は、原価や仕入れ値を度外視した価格で販売し続けることをいいます。
公正で自由な競争があるからこそ、企業は安くて優れた商品やサービスを提供しようとするんだね。
不正競争防止法
公正競争防止法は、業者間において公正な競争を遵守させるを目的として制定された法律です。
営業マンにおいては特に 「営業秘密の侵害」に注意する必要があります。
企業が持っている顧客名簿や価格情報などを不正に取得し、利用したり開示することが禁止されています。
そのことで被害にあった場合は、損害賠償などの法的措置が取られます。
会社を辞める時に情報を持ち出して、次の仕事に利用、開示する行為は、不正競争防止法に抵触し、 損害賠償を求められることになるよ。
医療機器業公正競争規約(公取協)
医療機器業公正競争規約は、かんたんに言うと、医療機器メーカーやディーラーが、不当な景品類を提供して、取引をゆがめる行為を規制するためのルールです。
医療機器の製造業及び販売業における不当な景品類の提供を制限することにより、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択および業者間の公正な競争を確保することを目的に定められています。
医療機器業公正取引協議会 医療機器業公正競争規約集より引用
これは、業界の自主規制ルールですが、消費者庁長官と公正取引委員会の認定を受けた、法的根拠のあるものです。
この自主規制の根拠となるのは、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)という法律です。
この他にも、 医療機器業公正競争規約では、医療機器の貸出しや立会等についても基準となるルールが定められています。
医療機器を長期にわたり無償で貸し出したり、治療に立ち会って労務を提供したり、製品の使用を不正に誘引する行為はだめだよ
FCPA(海外腐敗行為防止法)
世界は汚職に厳しい・・・
FCPAとは、米国の企業が、米国以外の海外政府関係者・公務員などへの贈賄行為を禁止する法律です。
ロッキード事件をきっかけに1977年に米国で制定され、その後、国際的な条約へと発展する
適応の対象は広く、米国企業、子会社とその従業員はもちろん、米国に関連するビジネスを行う日本の企業にも及びます。
つまり、医療機器業界に当てはめると、米国医療機器メーカーだけではなく、その代理店をしている輸入商社メーカーや医療機器ディーラーも対象となる法律ということです。
僕たち営業が注意すべきは、やはり贈賄に関係することだね。
不適切な便宜、取引の獲得や維持を誘引する不当な行為によって、政府関係者や公務員の決定や行動に影響を与えるようなことをしてはなりません。
官公立病院等で働く医療従事者やスタッフは、ほとんどの人が公務員だからこの法律が適応されるよ。
何よりも注意しなければならないのは、その損害の大きさです。
FCPAの贈賄禁止行為に違反した場合、企業は200万ドル以下、もしくは利益や損害額の2倍までの罰金が科せられます。
それだけではなく、個人にも罰則があります。
さらに、医療機器ディーラーに至っては、米国医療機器メーカーとの取引ができなくなったり、病院から指名停止措置などを科せられることになります。
罰金以外の損害も大きく、その影響を計り知ることはできません。
実際FCPAの適応により、米国医療機器メーカーと直接取引ができなくなったディーラーがいくつかあるよ。
まとめ
コンプライアンスの重要性を理解いただけましたでしょうか?
たった一人の社員が起こした違反行為が、今まで築き上げてきた会社の信用や、信頼を一瞬でなくすだけではなく、会社の存続を揺るがす事態になることを、理解いただけたかと思います。
医療機器業界で 営業している皆さんのほとんどは、単独で活動します。
その中で、採用の決定権を持つ、医師や医療従事者、病院事務の方と多く接することでしょう。
どんなときも「不正や違反に手を染めない」「法令や企業倫理を遵守する」という強い気持ちを持って、営業に励むようにお願いします。
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